28日の東京株式市場で日経平均株価が続伸し、半年ぶりの1万5500円台を回復した。上げ幅は一時100円近くに達し、日本株の堅調さが際立った。米国株の下げにも引っ張られず、下値不安を口にする投資家は少数派だ。強気に転じた投資家の背中を3つの追い風が押している。

 まず、第1の追い風が好調な企業業績だ。28日は好業績銘柄の高値更新が目立った。富士通ゼネラルが一時前週末比15%上昇し、24年ぶりの高値を付けた。買い材料となったのは、前週末25日に発表した2014年4~9月期業績の上方修正だ。エアコン販売が好調で、連結純利益見通しを前年同期比6割増の50億円と、15億円上積みした。4~6月期の純利益は前年同期比で倍増しており、強い業績見通しを素直に好感した。SMBC日興証券の神近広二アナリストは「主力の空調機事業が国内では消費増税後でも販売が予想以上に好調で、ポジティブサプライズだった」と分析する。

 日立ハイテクノロジーズも1割上昇し、ほぼ7年ぶりの高値を回復。4~6月期の連結純利益が14%減ったNTTドコモも足元の契約数が順調なことなどが材料視され、株式分割後の高値を付けた。

 消費増税後も持ちこたえている消費や法人需要が伝えられ、これから本格化する主要企業の業績への期待が高まり、買いを促す構図になっているようだ。東証1部の高値更新銘柄数は約170と、今月初め以来の水準となった。大和住銀投信投資顧問の門司総一郎経済調査部部長は「米国株には高値警戒感、欧州株はウクライナ情勢が重荷になるなか、好決算が目立つ日本株に視線が向かいやすい」と解説する。

 第2の追い風は、政府の成長戦略への思惑だ。前週末に報じられた「カジノ解禁」という政府方針を手がかりに28日は関連銘柄の商いが盛り上がった。例えば、貨幣識別機を手掛ける日本金銭機械が一時10%高の2016円まで切り上がったほか、貨幣処理機を製造するグローリーは3545円と約7年ぶりの高値を更新。オーイズミやコナミといった恩恵を受けやすいとみられる銘柄も総じて強かった。政府が東京五輪を開催する20年までに全国3カ所前後にカジノ開設を認める検討に入ったとの報道を材料に、「買い材料をこよなく欲していた投資家の資金が向かった」(カブドットコム証券の山田勉マーケットアナリスト)。
成長戦略といえば、方針は明らかになっても具体策が進展せず、つい最近まで投資家の期待は失速気味だった。ただ、カジノ解禁の方針は、具体的な地名をはじめとしてこれまでより内容が詳細で「成長戦略の実現性が高まっている」(国内証券)との解釈も聞かれた。カジノ解禁が進展すれば、経済特区や環太平洋経済連携協定(TPP)など、不透明感が強まっていた成長戦略のメニューも進展するのではないかとの思惑も働いたようだ。

 日本経済新聞とテレビ東京の25~27日の世論調査によれば、安倍内閣の支持率は48%と、政権発足以来初めて50%を割り込んだ。集団的自衛権を巡って低下傾向をたどっている。アベノミクス相場が始まってから、支持率と株価の動きは連動しやすいとされてきたが28日は、この経験則は効かなかった。むしろ、成長戦略を前に進めざるを得ない要因になるとの見方が広がったようだ。いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は「来秋に消費税率10%を実現するには、支持率の上昇は欠かせない。となれば、市場が評価する経済政策を打ち出す方向に政権は動くに違いない」と指摘する。

 3つめの追い風が緩和マネーに支えられ、株価の下値が小さいことだ。東海東京調査センターの隅谷俊夫投資調査部長は「5月下旬以降の戻り相場を通じ、株価が軟調な場面では公的年金や日銀の買いが入りやすいということを投資家は意識した。今後も下落局面では同様の買いが入るとの見方が下値不安の小ささにつながっている」と話す。下値をたたいても利益が得にくいとなれば、短期筋も売り方向は仕掛けにくくなる。今まで売り越し基調の海外投資家や個人が買いに転じてきているのも、強い材料とみられている。

 注意したいのは、28日は海外ファンドなどによる日経平均先物への仕掛け的な買いが上げ幅を大きくしたという指摘だ。戻りが急で、一部の投資家が先物を使って買い戻しを迫られたという見方がある。日経平均の将来の価格変動を予想して取引するオプション市場では、こんな動きが出ている。みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは「権利行使価格が1万5500円のコール(買う権利)の未決済残高(建玉)は約3万枚と、他の価格帯に比べても多い。1万5500円を上回ると売り手によるヘッジ買いが先物に入りやすい」と解説する。

 企業業績、政権の成長戦略、緩和マネーへの評価は、いずれもちょっとした材料で風向きがすぐに変わりかねない。午後に入って買いの勢いが鈍った点も踏まえて、個々の材料を吟味する慎重な視点は忘れないようにしたい。